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相続人現れず!

宙ぶらりんの財産の行き先

合計10ヶ月以上の期間を経ても相続人が現れなかった場合、昨日お話しした特別縁故者として分与を申し立てる人を待つ期間に入ります。
3ヶ月です。
もし、その間に申立てる人がいなかった場合、もしくは、申立てをしても特別縁故者であって分与が相当と認められなかったり、分与されたとしても残余の財産がある場合には、どうなるでしょうか?

共有持分

まず、他の誰かと共有している財産がある場合には、民法に特別の規定があって、死亡した者の持分は他の共有者に帰属するとされています。
たとえば、ABとともに、3分の1ずつの持分で不動産を所有している場合には、ABに6分の1ずつ帰属し、ABが各2分の1の持分で共有することになります。

ちなみに、共有持分も、特別縁故者への財産分与の対象となるかどうかが議論されていたのですが、最高裁判所が財産分与の対象となるということを判断し、決着がついています。
ですので、共有持分が他の共有者に帰属するのは、特別縁故者の財産分与がなされなかった場合のお話になります。

共有持分以外

さて、それ以外の財産は全て、国庫に帰属するとされています。
相続人がいなくて、債権者や受遺者には全て行き渡って、特別縁故者にも行き渡るか、もしくは存在しなくて、共有持分は他の共有者に渡って、それでも余っていた場合には、国のものです。
ようやく相続財産法人は消滅します。
相続財産管理人は、その間の収支の計算をして、仕事を終えることになります。


特別縁故者って?

相続財産の分与

合計10ヶ月以上の期間を経て相続人がいないことが確定した場合、そこから3ヶ月以内であれば、自分は「特別縁故者」ですという主張をする人は、家庭裁判所に相続財産分与の申し立てをすることができます。

特別縁故者とは

では、特別縁故者とはなんなのか?
相続人ではないけれど、事実上特別な関係にあった人というイメージです。

民法では、
・被相続人と生計を同じくしていた者、
・被相続人の療養看護に努めた者、
・その他被相続人と特別の縁故があった者
としています。
実際は、裁判所の判断に委ねられます。

具体的には?

わかりやすいのは、内縁の妻ですかね。
あとは、事実上の養親や養子、未認知の子ども、報酬以上に献身的に看護に尽くしてきた付き添い看護師などが、今までに認められてきています。
ただ、認められるかどうかというのは本当に裁判所の判断次第です。
家庭裁判所が、特別縁故者に当たることを認め、財産を分与することが相当であると判断した場合に初めて権利が付与されます。

分与が相当であるとされても、相続財産の全てなのか一部なのか、内容や方法、程度など、具体的なものは全て裁判所が様々な要素を考慮して決定します。

ちなみに、特別縁故者に当たるであろう人が、その申立てをする前に死亡した場合には、特別縁故者に当たるであろう人の相続人であっても、その地位を引き継ぐことはできません。
先ほど言ったように、家庭裁判所が認めて初めて権利が付与されるものなので、申立て前に亡くなった場合には、権利自体が発生していないためです。


相続人現る!!

相続人が現れた場合

相続財産管理人が選任されてから2ヶ月、債権の申出の期間2ヶ月以上、相続人がいるなら名乗り出てくださいという公告(相続人の捜索の公告と言われます)6ヶ月以上、合計すると10ヶ月以上はあります。

この期間内に、もし相続人が名乗り出た場合には、相続財産法人は、最初から存在しなかったものとして扱われます。
相続人がいるのであれば、最初からその者が相続財産を引き継いだことになるため、相続財産法人などというものをあえて観念する必要はないからです。

最初からなかったことになるため、管理や清算の手続きも廃止されます。

既に行った行為

しかし、相続財産管理人が、既に行った行為に関しては、無効にはなりません。
たとえば、清算の手続きの中で不動産を売却して現金を配当していたような場合、相続人が現れたことによって買った家が取り戻されてしまったら、買主は困ってしまいますよね。
また、配当を受けていた債権者も、これを取り戻されるとなると困ってしまいます。
なので、こういった既に行った行為は、有効なままです。

相続財産管理人の最後のお仕事

相続人が現れて相続を承認した場合、相続財産管理人は、管理していた期間中に生じた収支を全て計算して、相続人に報告しなければなりません。


相続人がいない人はどうするの?

相続財産法人

民法は、「相続人のあることが明らかでない時は、相続財産は法人とする」と規定しています。

…法人?
よくわからないですよね。
ちょっと説明しづらいのですが、相続人がいることがわからない場合には、相続財産が宙ぶらりんになってしまいます。
これを避けるために、相続人が不存在の場合に用意されている一連の手続きに乗せることになります。
手続きに乗せるために、相続財産自体を持ち主にするといいますか、擬制的に人として扱い、そこに「相続財産管理人」を置くようにしたのです。

「相続人のあることが明らかでない場合」

これも分かりづらいのですが、相続人がいるかどうかがわからない場合のほかに、相続人がいないことが明らかな場合にも、これにあたるとされています。
例えば、周りの親族がすでにいない場合や、相続人にあたる人全員が、欠格になったり廃除されたり、または相続放棄をするなどして、相続権が亡くなった場合です。

ただし、相続人がいることはわかってるけれども、その人がどこにいるのかわからない場合は、これにあたりません。
そのような場合には、相続財産法人は作られず、不在者の財産の管理のための手続きによって処理されることになります。

相続財産の管理

相続財産管理人は、利害関係者や検察官の請求で、家庭裁判所が選任します。
選任されると、公告されます。
相続財産管理人は、相続財産を状況を調べ上げて、財産目録というものを作って、家庭裁判所に提出したり、財産状況を報告しなければなりません。

相続財産管理人選任の公告をしてから2ヶ月経っても相続人が判明しなかった場合には、相続財産の債権者と、遺贈を受けた人(受遺者といいます)に対して、2ヶ月以上の期間を定めて、「債権があるならこの期間内に名乗り出てくださーい、でないと、あげませんよー」という旨の公告をします。

この2ヶ月以上の期間が経過すると、「清算」という手続きに入ります。
相続財産管理人は、申出があったり判明している債権者や受遺者に対して、「配当弁済」をします。
プラスの相続財産から、支払っていくのです。
もしもプラスの財産が、全ての弁済をするのに足りないような場合には、各債権者の債権額の割合に従って弁済されます。
たとえば、500万円の債権者Aと1500万円の債権者Bがいて、プラスの財産が1000万円しかない時には、Aに250万円、Bに750万円が支払われます。

さて、この2ヶ月以上の期間でも相続人が判明しなかった場合、6ヶ月以上の期間を定めて、「相続人いませんかー?いるならこの期間内に名乗り出てくださーい」と、公告します。
これは、相続財産管理人か検察官の請求で、家庭裁判所が行います。

この期間内に相続人が現れなかった場合には、たとえ実は相続人がいたとしても、後から自分が相続人であると主張することはできません。

さて、少し長くなってしまったので、もしどこかの過程で相続人が現れたら!?
というお話は、明日にしたいと思います。


こんな場合には単純承認とみなされます

熟慮期間を過ぎた場合

単純承認は、限定承認や放棄の場合と異なり、「単純承認しますよ」と意思表示をすることは要求されていません。
3ヶ月の熟慮期間内に、限定承認も放棄もしなかった場合には、単純承認したものとみなされます。

また、以下のような場合にも、単純承認したものとみなされます。

相続財産の全部または一部を処分したとき

相続財産の全部または一部を処分した場合には、単純承認承認をしたものとみなされます。
処分というのは、例えば売却したり、債権の取り立てをしたり、3年を超える建物の賃貸をしたりするような場合です。

このようなことをした場合には、あぁ、相続するんだなって思われても仕方ないといえます。
明確に意思表示をしなくても、単純承認をする意思を推認できるので、単純承認したものとみなされます。

相続財産について背信行為があった場合

相続財産の全部または一部を、隠したり、こそっと消費したり、わざと相続財産の目録に記載しなかった場合には、単純承認したものとみなされます。
この場合の相続財産は、プラスのものもマイナスのものも含みます。
限定承認や放棄をした場合でも、このような行為があると、単純承認したものとみなされます。

相続財産の目録というのは、プラスの財産、マイナスの財産、どのような種類の財産がどれだけあるのかを示した書類です。

ただし、放棄をして、それによって相続人になった人が承認した後に放棄をした人が上記の行為をしたとしても、単純承認をしたとはみなされないとされています。