「相続」カテゴリーアーカイブ

法定相続情報証明制度の研修

若林支部主催の研修会に参加してきました。
前半は、法務局の方が来て、法定相続情報証明制度について、後半は、支部の先生による、古物商許可について、それぞれ説明してくださいました。

法定相続情報証明制度、これ、簡単に言うと、相続の時に出す、被相続人(基本的には亡くなった人)の生涯の戸籍の束を、1枚の紙で済ませられるようにする制度です。
何枚もの戸籍謄本(全部事項証明)や除籍謄本で、被相続人の法定相続人が誰なのかを証明するところ、一定の手続きをすると、被相続人の法定相続人の情報が書かれた紙を出してくれて、その紙1枚で法定相続人が誰なのかを証明できるというものです。

これを、もう少し普及させたいようです。
ただ、個人的には、
「法定相続情報証明制度」…10文字って、これ、長すぎると思いませんか?
省略しようにも、どこをどう略していいのかよく分からない。
普及させたいのであれば、「社会保障・税番号制度」=マイナンバー制度のように、イメージしやすい愛称があった方が良い気がします。

でも、資料は分かりやすく、説明スピードも分かりやすかったです。
石巻支部の研修会でも、同制度についての研修を受けたのですが、2回説明を受けたためなのか、イメージしやすくて良かったです。
無料で利用できますし、出される側も分かりやすくて便利だと思うので、積極的に活用していきたいですね。

古物商についてはまた明日書こうかなぁと思います。


配偶者がいない人が亡くなった場合

2015年の国勢調査によると、生涯未婚率は男性が23.37%、女性が14.06%だったそうです。

ちなみに、生涯未婚率とは、50歳まで一度も結婚をしていない人の割合とされます。

離婚率も高いですし、夫婦のどちらかが亡くなった場合、残された方が亡くなる際には配偶者なしの状況が多いでしょうから、死亡時に配偶者が存在しない場合の相続関係は、結構身近な話なのではないかと思います。

今日は、配偶者がいない場合の相続関係についてお話ししたいと思います。

有効な遺言がある場合

まずは、有効な遺言書があるかどうかです。
有効な遺言書があれば、遺留分を除き、その通りに財産が分けられるでしょう。

有効な遺言がない場合

遺言がない場合、あるいはあっても無効な場合には、子どもがいるかどうかがポイントです。
生涯独身であったとしても、認知をした子どもがいたり、養子縁組をしている場合もあるため、確認した方が良いでしょう。
子どもは第1順位の相続人です。
養子を含め子どもがいた場合には、子どもが全て相続します。
複数いる場合には頭数で分けます。
3人いれば3分の1ずつです。

実子なのか養子なのか、嫡出子なのか非嫡出子なのかによる違いはありません。

子どもがいない場合

子どもがいない場合には、次の順位の相続人は直系尊属です。
両親や祖父母ですね。
両親ともに存命の場合には2人ともが2分の1ずつ、どちらか一方だけ存命の場合には、その人が全額を相続します。

もし両親とも亡くなっていた場合で祖父母が健在であれば祖父母が相続人となり、複数いればその頭数で分けます。

ちなみに、養親(養子縁組をした親となった人)も親に含まれます。

直系尊属がみな亡くなっている場合

直系尊属が存命でない場合には、次の順位の相続人は兄弟姉妹です。
ここが少し複雑なのですが、亡くなった本人と両親が同じであれば1人、片親のみ同じで半分血が繋がった状態であれば0.5人として計算して分けます。
両親同じ兄と、腹違いの妹がいる場合には、兄が3分の2、妹が3分の2の割合で相続します。

途中で誰かが放棄した場合

子どもはいるけれども、その全員が相続放棄したような場合には、いないものとして扱われ、第2順位の直系尊属が相続することになります。

子どもや兄弟姉妹が亡くなっている場合

子どもはいたけれども、すでに亡くなっている場合、もしもその子どもに子どもがいれば、その人が相続人となります。
被相続人から見ると孫にあたりますね。

代襲相続といいます。
亡くなった子どもが受け取るはずだった相続分を、孫が頭数で分けることになります。
子どもが2人いて、そのうち1人が亡くなっていて、その子どもが2人いる場合には、生きている子どもが2分の1、孫(亡くなった子どもの子ども)2人が4分の1ずつ相続します。

直系卑属、つまり子どもや孫、ひ孫の場合には、制限なく代襲相続されます。
孫が亡くなっていてもひ孫がいればひ孫に、再代襲されるわけです。

一方、兄弟姉妹が亡くなっていて、生きていれば相続人となっていた場合には、兄弟姉妹の子どもは代襲相続ができますが、孫以降はできません。

あまり遠い縁まで認めてしまうと、親交がなく、赤の他人に近いような人が思いがけず得をしてしまうことになりますし、兄弟姉妹の孫にとても思い入れがあり、相続をさせたいと願うのであれば、遺言をすれば良いからです。

相続人がいない、もしくは全員が相続放棄した場合

上記のような順位で辿っていっても相続人が存在しない場合、もしくは、存在しても全員が相続を放棄した場合、もし内縁の妻や夫など財産分与を受けるにふさわしい特別な関係のある人がいれば、その人が申し出をして裁判所が認めれば財産分与を受けることができます。
上記のような特別な関係のある人を特別縁故者といいます。

特別縁故者がいない場合や、財産の残りがある場合

特別縁故者がいない場合や、特別縁故者がいて財産分与がなされたけれども残りがある場合、被相続人の財産の中に誰かと共有しているものがあれば、その共有持分は他の共有者に帰属します。

残った財産の行き先

そこでも残った財産は、国庫に帰属することとなります。

最後に

今日は、配偶者がいない場合の遺産相続についてお話ししました。
最近では、 結婚はしないものの結婚に近い状態(同棲や事実婚、内縁など)のカップルもいますよね。
ただ、そういったパートナーには、子どもや親、祖父母や孫、兄弟姉妹、甥っ子姪っ子、そういった人たちがいない場合で、かつ裁判所が認めた場合にしか財産分与はされないのです。
法律婚をしない(婚姻届を出さない)という選択をする理由は人それぞれだと思いますが、もし自分の死亡時にパートナーに財産を少しでも渡したいと願うのであれば、遺言書を残してあげる必要があると思います。
遺言書がないために、内縁関係の相手の兄弟にそれまで住んでいた家から立ち退きを求められるといった事例はたくさんありますから。


検認ってどんなことするの?立会人は?手続きの流れは?

今日は昨日に引き続き風の強い1日でしたね。
今日は晴れるかなと思って、軒先に干し椎茸のネットを吊るしていたのですが、出がけにポツポツと雨が降ってきたので、慌てて取り込みに戻りました。

あ、自宅で椎茸育ててるんです 笑
今20日目なんですが、46本も収穫できたんですよ!
小さいですけど。

さて、少し話が逸れましたが、今日は検認についてです。
今まで検認検認と言ってきましたが、いったいどんなものなんだろう?
気になるところだと思いますので、流れをご紹介しますね!

検認手続きの流れ

まず、遺言書を保管していた人は遺言者が亡くなったことを知ってから、遺言者を発見した人はその発見時から、遅滞なく家庭裁判所に遺言所を提出し、検認の請求をしなければなりません。

裁判所は申し立てがあると、検認の予定日時を決定し、相続人全員に通知します。
相続人が、検認に立ち会うかどうかは自由です。
参加しなかったとしても、相続ができなくなるとか、そういったことはありません。

遺言書に封がしてある場合には、検認のときに開封されます。

まずは、遺言の保管者や発見者に対してその時の状況などを確認します。
次に、出席者に対して意見を求めます。
意見というのは、筆跡や印、遺言書自体の状態がおかしくないか?といったようなものです。

こうした検認の手続きが終わると、遺言書に「検認済み」の印が押されます。
検認済みの印が押された遺言書は、申立人に返却されます。

この後、裁判所では「検認調書」というものを作成します。
立会人の述べたことや、遺言書の状態などを記し、遺言書や封筒のコピーと一緒にまとめたものです。

検認の手続きが終わると、裁判所は手続きが終わったことを相続人に通知します。
ただ、通知がされるだけで、内容などを伝えるわけではありません。
内容を知るために、相続人は検認調書を交付するよう裁判所に請求することができます。

以上が検認の流れです。

最後に

検認、検認と何気なくいっておりましたが、こうして書き起こしてみると結構面倒な手続きですね。
ただ、実際に立ち会った人はあっけないと感じる人が多いようです。
裁判所に呼ばれること自体がなかなかないため、皆さんかしこまってしまうのかもしれませんね。
立ち会うか立ち会わないかで相続分が変わったりといったことはないですが、なかなかない機会です。
もし呼び出されるようなことがあった場合には(身内にご不幸が起きるということなので、あんまり呑気には言えないところですが)、いってみてはいかがでしょうか。


相続人は自分だけなのに、遺言で全財産を赤の他人に譲るとされていたら?

今日は、午後から雨でしたね。
風も強くて、窓の外から聞こえる音が少し怖かったです。
桜が散っていなければいいのですが。

さてさて、今日はまた法律の話に戻りましょう。
今日は長いです。
書き終わった今見たら、全部で2300字以上もありました;;

今日の事例

Aさんは、Bさんの一人娘でした。
Aさんの母は、すでに亡くなっています。
他に兄弟もいないため、Aさんは自分が唯一のBさんの相続人だと思っていました。
闘病の末にBさんが亡くなって程なく経ったころ、弁護士であるDから連絡がありました。
Bさんが遺言書をのこしていること、その内容が、「Bさんの友人の子どもであるCさんに、5000万円の預貯金と2つの不動産といった遺産をすべて渡す」といったものであることを弁護士DはAさんに伝えました。
Aさんは大混乱です。
Bさんは病気を患っており、10年にもわたって入退院を繰り返し、その間ずっとAさんが介護や付き添いなど尽くしてきました。
Cさんが顔を見せたことはありましたが、Aさんが知る限りは1度だけです。
遺言作成日には、D弁護士が立ち会っているようですが、その前後の期間も含めて、Bさんは遺言をできるような精神状態ではなかったはずだとAさんは言います。
ちなみに、遺言作成時点でのBさんの預貯金は3000万円で、相続発生したBさんの死亡時には、入院費用などで2500万円に減っていました。

考察

なにやら怪しげな事例です 笑
いや、笑い事ではないですね。
でもフィクションですのでご安心ください。
当事務所はプライバシー厳守です。

遺留分

さて、まずはCさんですが、Cさんは全くの他人ではありますが、仮にBさんが真意でCさんに遺産を相続させたいと願い、方式に則った遺言を作成していたのであれば、Cさんは遺産を受け取ることができます。
ですが、Aさんには遺留分があります。
法定相続人は子どもであるAさんのみなので、遺産全体の4分の1について、Cさんに遺留分減殺請求をすることができます。

付言

ですが、それじゃ納得できないですよね。
この場合、なぜCさんに?という思いがAさんにはあるはずです。
通常は「付言」というものでこのような遺言をのこす理由を示しますが、まずはそれを確認したいですね。
その理由でAさんが納得できればいいのですが。。。

遺言無効確認訴訟

納得できない場合には、この遺言、そもそもBさんの真意でないのでは?という疑問が生じますよね。
どうにかして取り戻したいと考えると思います。
その場合には、地方裁判所に対して、Cさんを被告として遺言無効確認訴訟を提起することになります。

形式的な要件

形式的な要件を欠く場合、つまり、自筆証書遺言の方式に則っていない場合には、無効となります。
全文がBさんの字で書かれているか?
正しい作成日時が書かれているか?
署名、押印はあるか?
もしこのような要件に従っていたのであれば、形式的には有効ということになります。

真意かどうか

形式的に有効な場合、次に考えることは遺言者、つまりBさんの真意によるものなのかどうかです。
作成当時、「Bさんは遺言をできるような精神状態ではなかったはず」とのAさんの記憶からすると、そもそも遺言能力がなかった可能性もあります。
病院での診断記録などが、Bさんの状態を判断する助けになるのではないでしょうか。

預貯金額の相違について

また、預貯金の額について、相違があるようです。
預貯金の額は、基本的に流動性があるものですし、銀行の残高を詳細に覚えている人は少ないでしょうから、銀行名や普通/定期預金、口座番号などによって特定できれば、作成時と残額が変わっていたとしても問題ありません。
ただ気になるのは、いくら流動性があるにしても、3000万と5000万は間違えるかな?というところです。
この辺も、Bさんの状態を判断する助けになるかもしれませんね。

寄与分は?

ちなみに、Aさんが10年にもわたって入退院を繰り返すBさんの介護や付き添いなどをしてきたことから、寄与分が認められるのでは?と考える方もいらっしゃるかもしれませんが、寄与分は、遺産分割の際に考慮される要素なのです。
今回の事例の場合ですと、すべての財産をCさんにということですので、遺産分割の余地がありません。
このため、Aさんが寄与分の主張をすることはできないんです。

もしかして?

ちょっと別の見方をすると、もしかしたらCはBさんの隠し子だったということも考えられなくもないですけどね。
Bさんの友人の奥様と不倫をしていて、罪悪感からCさんに遺産をあげることにした、と。
いろいろともめてかえってありがた迷惑な気もしますが。

最後に

私が最も疑っているのは、この弁護士Dは果たして本物なのか?ということです 笑
最悪、Cさんと弁護士Dが共謀してBさんに思うままに遺言を書かせた可能性もあるのかな、と。
そうでなかったとしても、こんな遺言では、法定相続人が納得できず、遺産を取り戻したいと考えるのは当然ですよね。
赤の他人に財産を譲りたいこともあると思いますが、それには絶対に理由があるはずです。
その理由を「付言」によって明らかにしてあげること、法定相続人が納得できないだろうなと想定される内容の場合には、最初から遺留分に配慮した内容を提案してあげることが必要なのではないでしょうか。
そうすれば、遺贈を受ける人にとっても、もめることなく気持ちよく受け取れると思いますので。

依頼を受けて立ち会っている以上、このような配慮があってしかるべきだと思います。
遺言無効確認訴訟となると、弁護士さんの仕事で、行政書士はお役には立てないのですが…
今回の事例のような場合であれば、Aさんが納得できるまで戦ったほうがいいと思います(あくまで個人的な意見です)。
Bさんが亡くなった後も、Aさんは生きていかなければならないのですから。


秘密証書遺言のデメリット

今日は普通の方式の遺言3種類のうちの最後のひとつ、秘密証書遺言のデメリットについてお話しします。
昨日は秘密証書遺言のメリットについてお話ししました。

自筆証書遺言と公正証書遺言のいいとこどりのような秘密証書遺言のメリットでしたが、実はあまり利用されていません。
それは、以下のようなデメリットがあるからなんです。

遺言が無効になる可能性がある

秘密証書遺言も、他の遺言の方式と同様、厳格に方式が定められています。
例えば、秘密証書遺言は遺言書に押印をしたのと同じ印で封印をしなければなりません。

ですが公証人や証人は、封印をした後の姿しか見ていないため、同じ印が使われているか否か、知るすべはありません。
内容を秘密にできる反面、誰のチェックも受けていないということで、形式違反で無効になってしまう可能性があるのです。

また内容についても、不明確で解釈が分かれるような場合には、せっかくのこした遺言の意味がきちんと伝わらないおそれがあるでしょう。

遺言が発見されない可能性がある

秘密証書遺言は、遺言書の存在自体は公証人と2人の証人が確認しています。

ですが、公正証書遺言と異なり、保管は自分自身でしなければなりません。
紛失や盗難のおそれもあり得ますし、きちんと保管していたとしても、相続人がその存在や保管場所を知らなければ、せっかく作った遺言書が発見されない可能性があるのです。

検認が必要

秘密証書遺言は、自筆証書遺言と同様、発見したとしてもすぐに開けてはいけません。
家庭裁判所での検認を経る必要があります。

このため、検認が不要な公正証書遺言に比べ、手間と時間がかかります。

手続きが煩雑で、費用が掛かる

秘密証書遺言を作成するには、公証人と2人の証人に確認をお願いしなければなりませんので、公正証書遺言と同様、手間と費用が掛かります。

最後に

秘密証書遺言のメリットは、自筆証書遺言と公正証書遺言のいいとこどりのようなイメージでした。
ですが以上のように、秘密証書遺言のデメリットもまた、自筆証書遺言と公正証書遺言の悪いところどりのようなイメージなのです。
このために、なかなか利用されていないのではないかと思います。

どの方式にも、それぞれメリット・デメリットありますので、優先事項を考えながら選ぶのが一番ですね。
ちなみに、手間や費用は掛かってもいい、それでもどうしても内容は知られたくないし、本文を自筆するのは嫌だ、といった方には秘密証書遺言はちょうどいいのだと思います。