準正

準正には2種類ある

昨日は、嫡出子としての推定を受けない子どもでも、婚姻と認知という要件が揃ったときに、嫡出子となるというお話をしました。

2種類あると書いたものの、そんなに大袈裟な話ではなく、婚姻が先なのか、認知が先なのかによって、呼ばれ方が違うというだけです。

婚姻準正と認知準正

認知→婚姻という順番だと、婚姻準正となります。
婚姻準正の場合には、婚姻をしたときに、嫡出子になります。
それまでは、非嫡出子です。

婚姻→認知という順番だと、認知準正です。
ということで、「〇〇準正」の〇〇に入るのは、順番的に後に来る方です。

認知準正の場合に、嫡出子となるとき

認知準正の場合には、認知をしたときに嫡出子となるというふうに民法の条文上は規定されています。
ですが、条文を無視して、認知準正の場合にも婚姻時に嫡出子になると解釈されてきました。

なぜ条文を無視してまで強引にそのような解釈をしてきたかというと、以前は、嫡出子と非嫡出子の法定相続分が違っていたからです。
非嫡出子は、嫡出子の半分しか法定相続分がありませんでした。

認知は、父の死後に強制的に求めることもできます。
もし、被相続人の死後に認知がなされた場合、認知時に嫡出子となったとしても、相続の開始時には非嫡出子として扱われ、遺産は嫡出子の半分しかもらえませんでした。
それでは意味がないということで、認知準正の場合も、嫡出子となるのは婚姻の時と解釈されていたのです。

ですが、現在は嫡出子も非嫡出子も、法定相続分は同じになりました。
ということで、認知準正の場合には、条文通りに認知時に嫡出子となるとしても、不都合はないので、あえて条文と異なる解釈をする必要は無いと思います。


嫡出子って?

嫡出推定

嫡出子というのは、婚姻関係にある男女間に懐胎、出生した子であるとされています。
原則としては、結婚している夫婦の間に生まれた子ということですね。

民法では、「妻が婚姻中に懐胎した子は、夫の子と推定する」とされています。
懐胎(かいたい)は、妊娠のことです。

婚姻中に妊娠したかどうかを判断するために、
「婚姻の成立の日から200日を経過した後又は婚姻の解消若しくは取消しの日から300日以内に生まれた子は、婚姻中に懐胎したものと推定する」という規定もあります。

妊娠してから子どもが生まれるまで200日から300日くらいだろう、的な、少し雑な規定ですね。

内縁関係にある場合

内縁関係にあったとしても、この推定は及びません。
つまり、実質的に結婚していたような状況であったとしても、婚姻届を出していなければ、その男女の間に生まれた子は嫡出子と推定されないということです。
例えば、200日の内縁関係を経てから、婚姻届を出すに至り、届けを出してから150日で子どもが生まれた場合には、嫡出子との推定はされません。

ただし、これは、民法の原則です。
推定は受けないながらも、戸籍実務上は、婚姻から200日以内であっても嫡出子として届け出ることはできるようです。

準正

また、「認知(にんち)」をすることで嫡出子となることもできます。

ただ単に認知をしたのではダメでして、婚姻プラス認知という状態が必要です。
嫡出子としての推定を受けない子どもも、婚姻と認知という要件が揃えば、嫡出子になります。
「準正(じゅんせい)」といいます。
明日は準正についてもう少し詳しくお話しします。


寄与分の具体例

労務の提供又は財産上の給付

寄与分が認められたケースとして、どのようなものがあったかを、紹介したいと思います。
・長い間被相続人の営む事業に従事していたが、他の従業員に比べて著しく低い給料(2、3割程度)しかもらっていなかった被相続人の子ども
・被相続人の養子になり、事業を営む被相続人の事実上の後継者として事業に従事していた、被相続人の娘婿

療養看護その他の方法

・被相続人の入院後に付き添い看護をしていた被相続人の後妻
・息子夫妻と同居をして、自身の収入の大部分を息子夫妻との生活費に費やしていた父母

特別な寄与

家族として要求されるような範囲での寄与では足りず、「特別な寄与」なのかどうかで線引きをしているとされますが、言葉にとらわれる必要はないと私は思います。
そもそも寄与分というのは、「相続人間の実質的な公平」のための制度なので、この人に多めにあげないと不公平だなと思う程度の寄与を「特別な寄与」と名付けたのではないでしょうか。

認められるのは相続人のみ

さて、寄与分が認められるのは、相続人のみです。

例えば、どんなにマスオさんが波平さんの介護に手を尽くしたとしても、マスオさんには寄与分は認められないのです。
ただし、それではやっぱり不公平だということで、マスオさんはサザエさんの「履行補助者」であるとして、サザエさんの寄与分として認めた例もあります。
履行補助者というのは、雑な言い方ですが、「手足」くらいに考えればいいと思います。

ちなみに、相続を放棄した人も、最初から相続人でなかったものとして扱われるため、寄与分は認められません。


介護した人もしてない人も、同じ相続分なの?

法定相続分を修正

波平さんが、亡くなる前に介護が必要な状態になり、フネさんも高齢のために介護ができるような状態ではなかったとします。
そうなると、介護は外注するか子どもたちがするかということになるでしょうか。

ここでは、サザエさんがずっと波平さんの介護を献身的にしてきたとします。
カツオくんとワカメちゃんは、就職して一人暮らしをしたとしましょう。

波平さんが亡くなった時の相続分は、フネさんが2分の1、サザエさんとカツオくん、ワカメちゃんが6分の1ずつでした。
この相続分は、妥当だと思いますか?

サザエさんがずっと介護を続けてきたんだから、彼女に少しでも多く相続させてあげたいと考える人は多いのではないでしょうか。

そこで、相続人間の実質的な公平を図る制度として、特別受益の持戻しともう一つ、寄与分というものがあります。
「きよぶん」です。

寄与分

「被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした者」には、寄与分を控除したものを相続財産とみなすと規定しています。

法律の文言は分かりにくいですね。
簡単にいうと、波平さんのお仕事を手伝ったり、出資したり、介護をしたりして、波平さんの財産が減るのを防いだり増加させたりすることに特別な寄与をした人には、多めにあげますよっていう内容です。
「特別な寄与」というのがポイントなのですが、詳しくは明日お話ししたいと思います。


特別受益の具体例2

生計の資本

昨日は、「遺贈を受け、または婚姻もしくは養子縁組のためもしくは生計の資本として贈与を受けた者」が特別受益者とされているということで、具体例を挙げてお話をさせていただきました。
今日は後半部分の、「生計の資本として」の贈与についてお話ししたいと思います。

生計の資本としての贈与とは、社会生活を営むための基礎として役立つような贈与であるとされています。
例えば、独立資金や、土地や建物、農地の贈与などですね。

その他、議論されたものとしては以下のようなものがあります。

教育費

高校や大学、大学院、専門学校などの学費や留学費用などは、被相続人の財産状況や社会的地位を考慮して相当な範囲で、かつ他の兄弟姉妹と比較して特別不公平でなければ、特別受益にはならないと判断されることが多いです。

債務の肩代わり

被相続人が連帯保証や身元保証などで、相続人の1人の多額の債務を代わりに支払い、返してもらっていないような場合には、特別受益に当たると判断されることが多いです。

生命保険金

生命保険の受取人が、相続人の1人のみになっている場合には、受取人の生活状況や、被相続人がその者を受取人とした意味、金額などを考慮して、特別受益に当たるかどうかが判断されているようです。

また、特別受益になるとしても、保険金の分を丸々持ち戻すべきとは考えられていませんが、計算方法については諸説あって、裁判所の判断もまちまちです。

死亡退職金など

法律や、勤めていた会社の決まりで定められた者が受け取る遺族給付については、特別受益に含めることが多いです。

受取人は決まりで定められているだけなので、特にその者を受取人にしようという被相続人の意思はないからです。
また、死亡退職金は給料の後払いの性質を有するので、給料であれば、被相続人の相続財産の中に含めるのが適当だからです。