「マスオさんに全財産を相続させる」→他の人はもらえないの?

通常のサザエさん家族の場合

昨日は、遺留分というものがあって、必ずしも全財産をマスオさんに残すことはできないのだ、というお話をしました(マスオさんが全財産を相続することはできるのか?)。
サザエさんが「マスオさんに全財産を相続させる」と遺言をのこしたとしても、タラオ君は全財産の1500万円のうち、375万円は自分がもらう!と言えるのだということですね。

今日は、その375万円というのは、どこから出てくるのか?というお話です。

これについては、民法第1028条が定めています。

第1028条
兄弟姉妹以外の相続人は、遺留分として、次の各号に掲げる区分に応じてそれぞれ当該各号に定める割合に相当する額を受ける。
一 直系尊属のみが相続人である場合 被相続人の財産の三分の一
二 前号に掲げる場合以外の場合 被相続人の財産の二分の一

またケースごとに当てはめてみましょう。

まずは、通常のサザエさん家族の場合。
相続人は、マスオさんとタラオ君です。

相続人がマスオさんとタラオ君の場合、「直系尊属のみが相続人である場合」という第1号が当てはまらないので、それ以外の場合ということで、2号になります。
そうすると、サザエさんの財産の2分の1が全体としての遺留分になります。
タラオ君の遺留分を求めるには、そこにさらにタラオ君の法定相続分をかける必要があります。
(法定相続分についてはこちら→サザエさんで考える法定相続分

この場合、全体の遺留分2分の1かけるタラオ君の法定相続分2分の1なので、4分の1がタラオ君の遺留分です。
サザエさんの全財産が1500万円という前提なので、タラオ君の遺留分は、375万円ということになります。

タラオ君がいない場合

では次に、タラオくんがいない場合はどうでしょうか。
相続人は、マスオさん、波平さん、フネさんの3名です。

この場合も、直系尊属(両親や、祖父母)だけでなく配偶者であるマスオさんも相続人となるので、全体の遺留分は2分の1になります。
これに波平さん、フネさんの法定相続分をかけます。
彼らの法定相続分は各6分の1なので、1500万円の12分の1である各125万円が波平さんとフネさんの遺留分になります。

タラオ君も波平さんもフネさんもいない場合

では次に、タラオ君も波平さんもフネさんもいない場合です。
この場合には、マスオさんとカツオ君とワカメちゃんが相続人になります。
しかし、「兄弟姉妹以外の相続人は、遺留分として~~」とある通り、兄弟姉妹には、遺留分は認められていません。
なので、この場合には、もし「マスオさんに全財産を相続させる」と遺言があれば、カツオ君やワカメちゃんがサザエさんの財産を相続することはできないのです。

では、第1号はどのような場合に使うのか?

また、今回は「マスオさんに全財産を相続させる」という遺言がある場合を想定したので、出てこなかったのですが、第1号が想定する場面は、以下のような場合です。
マスオさんもタラオ君もいなくて、サザエさんが「全財産を波平さんに相続させる」とのこしていたような場合です。

この場合には、相続人は波平さんとフネさんの2人となり、「直系尊属のみが相続人である場合」なので、第1号に当てはまります。
そうすると、全体としての遺留分は3分の1です。
相続人が波平さんとフネさん2人の場合、フネさんの法定相続分は2分の1です。
ですので、フネさんの遺留分は、全体としての遺留分3分の1かける法定相続分2分の1で、1500万円の6分の1である250万円となるのです。


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