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自筆証書遺言のメリット

自筆証書遺言とは

自筆証書遺言とは、文字通り、遺言をする人が、自分自身の字で書いた遺言です。
全文、日付、氏名が自筆で書かれていなければならず、押印も必要です。
パソコンで作成プリントアウトしたものに、日付や氏名を書いて押印したとしても、自筆証書遺言としては無効です。

メリット

自筆証書遺言のメリットとしては、以下のことが挙げられます

<h2費用がかからない

まず一番のメリットは、費用がかからないことでしょう。
紙とペンさえあれば、誰でも簡単に作成できます。

極端な話、チラシの裏とかでも、字が書けてきちんと印影が出るものであれば可能ですが、使われるのが死後であることを考えると、ある程度耐久性があるものの方が良いでしょう。
それに、残された家族が見たときに、なんともいえない気分になりますからね。

ペンは、後から変造されるおそれがないように、鉛筆やシャープペンシル、消せるボールペンなどは避けた方が良いでしょう。

証人がいらない

公正証書遺言の場合、証人が2人必要です。
利害関係のある人は証人にはなれないので、家族以外で探す必要があります。

自筆証書遺言の場合は、証人がいなくても有効に作成できます。
ということは、遺言を作成したことや遺言の存在も、誰にも内緒にできるということです。

手軽で、何度も書き直せる

費用がかからないことや、証人いらないことから、自筆証書遺言は手軽な遺言の方式であるといえます。
遺言を作ったら終わりではなく、その後も生きて行くのですから、財産の増減があったり、人間関係の変化もあると思います。
そういったときに、その時の状況に合わせて適宜遺言を作り直せるのが、自筆証書遺言のメリットといえるでしょう。


遺言をしたからといってなんでも叶うわけではありません

遺言事項

遺言に記載をすることによって、遺言者が亡くなった際に効力が生じる事項を、遺言事項といいます。
いくら遺言者の意思とはいえ、なんだもかんでも思い通りになるとすると、かえって紛争の元になる恐れがあるからです。

主な遺言事項

財産関係

祭祀主催者の指定
相続分の指定、指定の委託
遺産分割方法の指定、指定の委託
特別受益の持戻しの免除
相続人相互間の担保責任の指定
遺贈
遺留分減殺方法の指定
一般財団法人の設立・財産の拠出
生命保険受取人の変更
信託の設定
「相続させる」旨の遺言

身分関係

認知
未成年後見人や未成年後見監督人の指定
推定相続人の遺言廃除や、その取消し

遺言執行

遺言執行者の指定・指定の委託

付言

概ねこんなところでしょうか。
減退されているとはいえ、結構幅広く認められているように見えますよね。

遺言では、遺言事項以外に「付言」というものがよく記載されます。
あくまで私個人の意見ですが、遺言事項だけの遺言って、なんだか寂しいですよね。

例えば、財産を特定の相続人に多めにあげたい場合だと、多めにあげたい理由がありますよね。
他の相続人には十分な財産があるからとか、介護をしてくれた感謝の気持ちとか、他の相続人には生前にいろいろ経済的な援助をしてあげたとか。
ただ財産の配分だけ書くよりも、その理由を書いてあげる方が、納得がいくのではないでしょうか。

また、財産に限らず、伝えたい気持ちってあると思います。
今までありがとうとか、これからも家族で支えあって、仲良く生きていってほしいとか、お母さんを大事にしてあげて、とか。
そんな思いを遺すのも、付言の役割です。

なので、もし遺言を書く時には、ぜひ「付言」も書いてあげてくださいね。


遺産分割協議中の賃料は誰のもの?

遺産から収益がある場合

被相続人が、所有する建物を他人に賃貸していた場合を考えてみましょう。
その場合、遺産分割中協議中で、その建物を誰が相続するか決まる前にも、賃料は発生し続けます。
遺産分割協議に何年もかかり、その間の賃料が結構な額になっていた場合、その賃料は誰のものになるのでしょうか?

賃料は遺産?

遺産分割協議中に発生した賃料は、相続開始時(被相続人が亡くなった時)には存在していなかったため、遺産には含まれないと考えられています。

では、その賃料を受け取れるのは誰でしょうか?

まず、民法では、遺産分割の効果は相続開始時にさかのぼると定められています。
そうなると、例えば遺産分割でAがその建物を相続すると決まった場合には、その建物は被相続人が亡くなった時からAのものであったことになります。
とすると、その間に発生した賃料も全てAのものになるのでしょうか?

裁判所の見解

この点について、最高裁判所(2005年9月8日判決)は、各相続人が相続分に応じて相続するとしています。

例えば、相続人がABCと3人いたような場合には、たとえAがその建物を単独で相続することに決まったとしても、その間の賃料については、BCも相続分に応じて受け取れるというのが、裁判所の判断です。


先祖伝来の農地を、長男に相続させたい

遺留分

財産と呼べる財産は、先祖伝来の農地しかない。
だけど、子どもはABCの3人いる。
BCの2人はすでに都心で就職していて、農地に興味はないようだ。
農地の農業は長男Aが継ぐ予定で手伝っている。

そんな場合でも、子どもには遺留分があります。
全体で2分の1なので、ABCには、各6分の1の遺留分があります。

遺言で農地を長男Aには相続させるとのこしても、もしもBCが遺留分減殺請求をすると、農地の価格の6分の1をBCそれぞれに渡すなどしなければならず、父の望みを叶えることはできません。

遺留分の事前放棄

こういう場合にできることは、遺留分の事前放棄です。
「事前」なので、父が生きている間にできます。
ただですね、家庭裁判所の許可が必要です。
脅されたり、理不尽な理由で遺留分を取り上げられるのを防ぐためです。
家庭裁判所が、放棄する人(ここではBC)の真意に基づくものなのか、放棄する理由が客観的にみて妥当かどうかというのを判断します。
真意であって、理由が妥当であると認められれば、遺留分の事前放棄が許可されます。

遺言

ここで放棄が認められるのは、「遺留分」です。
「相続分」ではありません。
なので、Aが農地を単独で相続するには、もう一手間が必要です。
そう、「Aに農地を相続させる」旨の遺言です。

遺留分の事前放棄プラス遺言で、父はAに農地を単独で相続させることができるんです。


大きな声じゃ言えないけど、愛人に遺産をのこしてあげたい

不倫はいけないけど…

当然ですが、不倫はよくないです。
多分、しているご本人もよくわかっていると思います。
自分や周りの人間をボロボロにしますから。
ですが、いけないとわかっていても止められないこともあるのが人間です。
中には妻はいるけど別居をしていて、愛人と内縁関係にある人もいるかもしれません。

自分が亡くなった時に、愛人の生活が心配になる人もいるでしょう。
遺言を作っておいてあげれば、死後に財産をあげられる可能性があります。

なお、ここでは不倫相手のことを愛人と呼ばせていただきます。
表現が難しかったのですが、イメージしやすいと思いますので。

愛人への遺贈

今までも、愛人への遺贈が認められた例があります。
ですが、認められるには要件があります。
要件は、大きくまとめると3つです。

まずは、愛人関係を維持するための遺贈ではないことです。
愛人関係を維持するためのものであれば、公序良俗(民法90条)に反して無効となります。
民法90条、民法の良心といえる規定ですね。

次に、愛人の生計を、遺言をする人が支えていて、その生計を守るための遺贈であることです。
遺言をする人が亡くなった際に、愛人の生活の保障をする目的である必要があります。

最後に、その遺贈が本来の妻や子どもの生活を脅かすものではないことです。
そのため、「全財産を愛人にあげる」というような内容の遺言は無効です。