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もしもサザエさんが亡くなってしまっても、タラオくんは波平さんの遺産の相続人になれます

親が亡くなると、代わりに相続できる?

もしサザエさんが亡くなってしまい、その後波平さんが亡くなった場合には、波平さんの遺産について配偶者であるフネさんが2分の1、子どもであるカツオくんとワカメちゃん、それにサザエさんの子どもであるタラオくんが6分の1ずつ法定相続分を有することになります。

サザエさんが仮に生きていたのであれば受け取れる遺産を、サザエさんの子どもに相続させる趣旨です。
代襲相続(だいしゅうそうぞく)といいます。
ちなみに、サザエさんと波平さんが例えば事故等で同時に亡くなった場合も、タラオくんは代襲相続可能です。

欠格、廃除も含まれる

また、仮にサザエさんが亡くなったのではなく、欠格になったり、廃除されたりして相続権を失った場合も、同じようにタラオくんが代わりに相続することができます。

欠格も廃除も、その人自身について効力を有するものであって、その子どもや孫(直系卑属)にまで効力が及ぶものではないのです。
ただ、サザエさんが生きていて、自ら相続を放棄したような場合には、タラオくんが代わりに相続することはできません。

サザエさんの意思で相続しないのか、サザエさんの意思とは別の理由で相続することができないのかで、タラオくんが代わりに相続することができるかどうかが決まります。

もしもタラオくんに子どもがいたら

タラオくんが仮に成長していて、子どもがいたような場合で、サザエさんとタラオくんが亡くなった後に波平さんが亡くなった時には、さらにタラオくんの子どもが、波平さんの遺産を代わりに相続することができます。
再代襲といいます。
ちなみに、被相続人(この場合波平さん)に対して、元々の相続人(この場合サザエさん)が子どもであれば、再々代襲まで認められています。
タラオくんの孫までいけます。

養子の場合

養子でも代襲相続可能です。
ただですね、養子の場合には注意しなければならないことがありまして、例えば、ちょっとイメージしにくいと思うのですが、、、波平さんが、養子縁組をしていたとします。
養子にした人には、縁組前から子どもがいたとします。
養子の連れ子ですね。
そして、縁組後に養子に子どもが生まれたとします。
この場合だと、養子の連れ子(縁組前の子)は、(※原則として)波平さんの孫にはならないのですが、縁組後の養子の子どもは、波平さんの孫になるんです。
そうすると、代襲相続できるのは、波平さんについて、子どもであったり孫やひ孫だったりする人なので、縁組後の養子の子どもは代襲相続できるのですが、(※原則として)養子の連れ子には代襲相続する権利はありません。

※コメントをいただいたので追記します。
「代襲相続できるのは、波平さんについて、子どもであったり孫やひ孫だったりする人」というところがポイントなので、一つだけ例外があります。
養子の連れ子であっても、元々波平さんの孫やひ孫だった場合には、代襲相続する権利があります。
マスオさんが波平さんと養子縁組して養子になった場合には、タラオくんは元々波平さんの孫なので、例えばマスオさんが亡くなった後に波平さんが亡くなったような場合には、マスオさんの代わりに波平さんの遺産を相続することができます。


親にひどいことしたら、相続権を奪われるかも?

廃除

昨日は、法律で定められている相続人が、相続権を奪われる場合として、2つの場合のうちの1つである、欠格についてお話ししました。
今日は、相続をされる人(亡くなる人)(「被相続人」といいます)の意思によって、相続権が奪われる、廃除についてお話ししたいと思います。

廃除事由

たとえば、歳をとって体が思うように動かなくなった父を、子どもが虐待していたような場合、「この子には遺産をやりたくない」と思うのは、自然な感情ではないでしょうか。

被相続人に対して、虐待をしたり、ひどい侮辱をしたり、著しい非行があった時には、被相続人は、家庭裁判所に対して、その者を廃除するよう請求することができます。

具体的に、どのような場合がこれに当たるのかは、裁判所の判断によるのですが、継続的な暴力などがあると、認められやすい傾向にあると思います。

ちなみに、廃除の意思は、遺言によって示すこともできます。
また、一度廃除の請求をして、廃除されることが決まった場合でも、いつでも裁判所に取り消しの請求をすることができます。
あくまでも被相続人の意思に沿うためですね。

裁判所の判断が必要な理由

とはいえ、被相続人がどれほど廃除してほしいと請求しても、裁判所に認められない場合もあります。
それはなぜなのかというと、廃除の効果が、相続人から相続権を奪うというとても強いものだからです。

相続権を奪うということは、以前お話しした遺留分もなくなります。
遺言で、ある者に相続させるとした場合でも、遺留分は認められることを考えると、いくら被相続人の意思とはいえ、遺留分まで奪われるのには、ある程度みんなが納得できるような理由が求められるのです。
理不尽な理由で相続権を奪うことは認められていません。

兄弟姉妹は廃除できない

なお、兄弟姉妹は、廃除することができません。
これは、兄弟姉妹には遺留分がないためです。
遺留分がないのだから、あえて廃除の請求をしなくても、遺産に関して、他の人に全て相続させたり、兄弟姉妹には相続分を与えない旨の遺言をすれば、防げるので、認められていないのです。


子どもなのに、親の遺産をもらえない場合もあります

相続人なのに、相続できない!

法律によって、相続人と定められている人でも、相続をできない場合があります。

たとえば、親を遺産目当てで殺害した子ども。
このような子どもが遺産を相続することは、納得いかない人の方が多いのではないでしょうか。

民法では、法律で定められた相続人から、相続人としての権利を奪う制度が定められています。
大きく分けると、「欠格(けっかく)」と「廃除(はいじょ)」です。

欠格は、欠格になる事項に当てはまると、法律上当然に相続権がなくなります。
廃除は、相続をされる人(亡くなる人)(「被相続人」といいます)の意思で、相続権を奪う制度です。

欠格事由

欠格になる事項として定められている行為は、全部で5つあります。

まず1つ目は、被相続人や、相続について自分より高い順位か、自分と同じ順位の相続人を殺した、もしくは殺そうとして、処罰された人です。
計画段階でも処罰されたのであればこれに当てはまります。
反対に、結果として死に至らしめたとしても、過失致死、障害致死など殺意がないものは、これにはあたりません。

2つ目は、被相続人が殺されたことを知っていながら、黙っていた人です。
ただ、善悪の判断をする能力のない人や、犯人がその人の配偶者や両親、祖父母、子供、孫など(直系血族)であった場合には、関係性を考えると犯人をかばって黙っているのも仕方ない、やむを得ないと評価されるため、これにはあたりません。

3つ目は、被相続人が、遺言に関する行為(作成、撤回、取り消し、変更など)をすることを、脅したり騙したりして邪魔をした人です。

4つ目は、3つ目と似ているのですが、被相続人を脅したり騙したりして、遺言に関する行為をさせた人です。

5つ目は、相続に関する被相続人の遺言書を偽造したり、いじったり、捨てたり隠したりした人です。
ただし、法律の条文上は要求されていないのですが、不当な利益を得ようとする目的がある場合にのみ、これに当てはまるとされています。
(最高裁判例昭和昭和56年4月3日)
なので、不当な利益を得る目的がない場合には、5つ目のケースには当たらず、欠格になりません。

明日は廃除についてお話したいと思います。


どんなに仲が良くても、遺言は別々に!

遺言は一人一人書きましょう

とっても仲良しのおじいさんとおばあさんがいました。
子どもが2人いましたが、2人とも都会に出て行ってほとんど帰って来ません。
亡くなった時のことを考えて、紙に「おじいさんが亡くなった時には、遺産は全ておばあさんに、おばあさんが亡くなった時には遺産は全ておじいさんに、2人とも亡くなった時には、土地と建物は長男に、残りの財産は次男に相続させる」という内容の遺言をおじいさんが書き、2人で署名押印をしました。

実はこの遺言は、無効になります。
民法は、2人以上の人が同じ証書で遺言することはできないと規定しています。
共同遺言といいます。

おばあさんについては、遺言の有効要件を満たさなかった場合

ちなみに、おじいさんに関しては、自筆証書遺言の要件を満たしますが、おばあさんは、全文を自筆で書いていないため、要件を満たしません。
しかし、この場合でも、共同遺言にあたると判断されています。
(最高裁判例 昭和56年9月11日)

共同遺言が禁止されている理由

いくら仲が良くても、遺言は個人の意思を残すものです。
真意である必要があります。
ですが、2人で同じ紙に書かれたものだと、どちらかがどちらかに脅されたり、気を遣ったりして、真意でない可能性も拭えません。
また、どちらかが撤回したいなと考えても自由がききません。
遺言というのは、遺言した人が亡くなった時に効力を生じるのですが、この遺言がいつ効力を生じるか(おじいさん亡くなった時なのか、おばあさんが亡くなった時なのか、2人とも亡くなった時なのか)、明確ではありません。
このように、共同遺言を認めてしまうと、困ったことが生じるのです。
また、別々に遺言をのこせば足りるのですから、あえて共同遺言を認める必要性もありません。
以上のような理由で、共同遺言は禁じられています。

内容が独立している場合

ちなみに、「おじいさんが亡くなったら、おじいさんの財産は全ておばあさんに相続させる」という内容とおじいさんの署名押印、「おばあさんが亡くなったら、おばあさんの財産は全ておじいさんに相続させる」という内容とおばあさんの署名押印といったように、それぞれ独立した内容の遺言を1枚の紙に残した場合、明確に分割できるために、遺言として有効となるのではないかという考え方もあります。

このような場合に、裁判所がどのように判断するのかは定かではありませんが、真意でない可能性があり得る点や、撤回が自由にできない点、また、あえて一枚の紙に残す必要性がないことを考えれば、無効とされる可能性は十分にあります。

ですので、どんなに仲良しだったとしても、遺言だけは1枚ずつ別々に書いてくださいね!


特殊な状況だからこそ、遺言をのこしたい時もありましょう

特別の方式の遺言

今日は、特別の方式の遺言4種類についてお話しします。
普通の方式の遺言では、厳格な方式が要求されているので、どうしても守れない場合もあります。
ですが、方式が守られていないことで、無効になるとすると、遺言をする人の意思が蔑ろになってしまいます。
そこで、特殊な状況下にある場合には、普通の方式の遺言の要件を少し緩和することを認めています。
それが、以下の4つの場合です。

いわゆる危篤状態の時

病気などによって、死が目前に迫っている人に認められているものです。
証人が3人必要です。
証人の1人に口頭で遺言の内容を伝え、書きつけてもらいます。
本人と他の証人に、書いた内容を確認してもらって、問題がなければ、証人全員が署名、押印をします。
その後、遺言をしてから20日以内に、裁判所に遺言者の真意であると判断してもらい、確認してもらう必要があります。

伝染病で隔離された時

伝染病のために行政処分によって隔離された場合には、警察官と証人各1人に立ち会ってもらって遺言書を作れます。
書き手に関しては、特に規定はありませんが、本人、警察官、証人、また筆記者が別にいる場合には筆記者も、署名と押印をする必要があります。
もし署名や押印ができない人がいる場合には、その理由も書いておく必要があります。

また、伝染病での隔離だけでなく、災害によって他の地域と隔絶されてしまった人や、刑務所に服役中の人にもこれが適用されて、上記の方式での遺言が認められるとされています。

船の中にいる人

船の中にいる人は、船長か事務員1人と、証人2人の立会いで遺言書を作ることができます。

この場合にも、書き手に関しては、特に規定はありませんが、本人、船長または事務員、証人2人、筆記者が別にいる場合には筆記者も、署名と押印をする必要があります。
署名や押印ができない人がいる場合には、その理由を書いておく必要があることも同様です。

船で遭難して、死が目前に迫っている人人

なかなかレアなケースだと思いますが、船に乗っていて遭難して、死にそうな場合に、遺言をのこしたい時の規定もあります。
証人2人に口頭で遺言をし、証人がその内容を筆記して、署名押印をします。
もし署名や押印ができない人がいる場合には、その理由を書いておく必要があるのは、前2つの場合と同じです。
その後、裁判所に遺言者の真意であると判断してもらい、確認してもらう必要があります。

上記4つの特殊な状況が解消した場合

例えば、なお、もし危篤状態から奇跡の回復をした場合や、服役中の人であれば出所した場合、船から無事地上に降り立った場合など、普通の方式の遺言をできるようになった場合には、その時から6ヶ月経つと遺言は無効となります。
できるのであれば、普通の方式でやりなさいということですね。