相続人は自分だけなのに、遺言で全財産を赤の他人に譲るとされていたら?

今日は、午後から雨でしたね。
風も強くて、窓の外から聞こえる音が少し怖かったです。
桜が散っていなければいいのですが。

さてさて、今日はまた法律の話に戻りましょう。
今日は長いです。
書き終わった今見たら、全部で2300字以上もありました;;

今日の事例

Aさんは、Bさんの一人娘でした。
Aさんの母は、すでに亡くなっています。
他に兄弟もいないため、Aさんは自分が唯一のBさんの相続人だと思っていました。
闘病の末にBさんが亡くなって程なく経ったころ、弁護士であるDから連絡がありました。
Bさんが遺言書をのこしていること、その内容が、「Bさんの友人の子どもであるCさんに、5000万円の預貯金と2つの不動産といった遺産をすべて渡す」といったものであることを弁護士DはAさんに伝えました。
Aさんは大混乱です。
Bさんは病気を患っており、10年にもわたって入退院を繰り返し、その間ずっとAさんが介護や付き添いなど尽くしてきました。
Cさんが顔を見せたことはありましたが、Aさんが知る限りは1度だけです。
遺言作成日には、D弁護士が立ち会っているようですが、その前後の期間も含めて、Bさんは遺言をできるような精神状態ではなかったはずだとAさんは言います。
ちなみに、遺言作成時点でのBさんの預貯金は3000万円で、相続発生したBさんの死亡時には、入院費用などで2500万円に減っていました。

考察

なにやら怪しげな事例です 笑
いや、笑い事ではないですね。
でもフィクションですのでご安心ください。
当事務所はプライバシー厳守です。

遺留分

さて、まずはCさんですが、Cさんは全くの他人ではありますが、仮にBさんが真意でCさんに遺産を相続させたいと願い、方式に則った遺言を作成していたのであれば、Cさんは遺産を受け取ることができます。
ですが、Aさんには遺留分があります。
法定相続人は子どもであるAさんのみなので、遺産全体の4分の1について、Cさんに遺留分減殺請求をすることができます。

付言

ですが、それじゃ納得できないですよね。
この場合、なぜCさんに?という思いがAさんにはあるはずです。
通常は「付言」というものでこのような遺言をのこす理由を示しますが、まずはそれを確認したいですね。
その理由でAさんが納得できればいいのですが。。。

遺言無効確認訴訟

納得できない場合には、この遺言、そもそもBさんの真意でないのでは?という疑問が生じますよね。
どうにかして取り戻したいと考えると思います。
その場合には、地方裁判所に対して、Cさんを被告として遺言無効確認訴訟を提起することになります。

形式的な要件

形式的な要件を欠く場合、つまり、自筆証書遺言の方式に則っていない場合には、無効となります。
全文がBさんの字で書かれているか?
正しい作成日時が書かれているか?
署名、押印はあるか?
もしこのような要件に従っていたのであれば、形式的には有効ということになります。

真意かどうか

形式的に有効な場合、次に考えることは遺言者、つまりBさんの真意によるものなのかどうかです。
作成当時、「Bさんは遺言をできるような精神状態ではなかったはず」とのAさんの記憶からすると、そもそも遺言能力がなかった可能性もあります。
病院での診断記録などが、Bさんの状態を判断する助けになるのではないでしょうか。

預貯金額の相違について

また、預貯金の額について、相違があるようです。
預貯金の額は、基本的に流動性があるものですし、銀行の残高を詳細に覚えている人は少ないでしょうから、銀行名や普通/定期預金、口座番号などによって特定できれば、作成時と残額が変わっていたとしても問題ありません。
ただ気になるのは、いくら流動性があるにしても、3000万と5000万は間違えるかな?というところです。
この辺も、Bさんの状態を判断する助けになるかもしれませんね。

寄与分は?

ちなみに、Aさんが10年にもわたって入退院を繰り返すBさんの介護や付き添いなどをしてきたことから、寄与分が認められるのでは?と考える方もいらっしゃるかもしれませんが、寄与分は、遺産分割の際に考慮される要素なのです。
今回の事例の場合ですと、すべての財産をCさんにということですので、遺産分割の余地がありません。
このため、Aさんが寄与分の主張をすることはできないんです。

もしかして?

ちょっと別の見方をすると、もしかしたらCはBさんの隠し子だったということも考えられなくもないですけどね。
Bさんの友人の奥様と不倫をしていて、罪悪感からCさんに遺産をあげることにした、と。
いろいろともめてかえってありがた迷惑な気もしますが。

最後に

私が最も疑っているのは、この弁護士Dは果たして本物なのか?ということです 笑
最悪、Cさんと弁護士Dが共謀してBさんに思うままに遺言を書かせた可能性もあるのかな、と。
そうでなかったとしても、こんな遺言では、法定相続人が納得できず、遺産を取り戻したいと考えるのは当然ですよね。
赤の他人に財産を譲りたいこともあると思いますが、それには絶対に理由があるはずです。
その理由を「付言」によって明らかにしてあげること、法定相続人が納得できないだろうなと想定される内容の場合には、最初から遺留分に配慮した内容を提案してあげることが必要なのではないでしょうか。
そうすれば、遺贈を受ける人にとっても、もめることなく気持ちよく受け取れると思いますので。

依頼を受けて立ち会っている以上、このような配慮があってしかるべきだと思います。
遺言無効確認訴訟となると、弁護士さんの仕事で、行政書士はお役には立てないのですが…
今回の事例のような場合であれば、Aさんが納得できるまで戦ったほうがいいと思います(あくまで個人的な意見です)。
Bさんが亡くなった後も、Aさんは生きていかなければならないのですから。


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