どんなに仲が良くても、遺言は別々に!

遺言は一人一人書きましょう

とっても仲良しのおじいさんとおばあさんがいました。
子どもが2人いましたが、2人とも都会に出て行ってほとんど帰って来ません。
亡くなった時のことを考えて、紙に「おじいさんが亡くなった時には、遺産は全ておばあさんに、おばあさんが亡くなった時には遺産は全ておじいさんに、2人とも亡くなった時には、土地と建物は長男に、残りの財産は次男に相続させる」という内容の遺言をおじいさんが書き、2人で署名押印をしました。

実はこの遺言は、無効になります。
民法は、2人以上の人が同じ証書で遺言することはできないと規定しています。
共同遺言といいます。

おばあさんについては、遺言の有効要件を満たさなかった場合

ちなみに、おじいさんに関しては、自筆証書遺言の要件を満たしますが、おばあさんは、全文を自筆で書いていないため、要件を満たしません。
しかし、この場合でも、共同遺言にあたると判断されています。
(最高裁判例 昭和56年9月11日)

共同遺言が禁止されている理由

いくら仲が良くても、遺言は個人の意思を残すものです。
真意である必要があります。
ですが、2人で同じ紙に書かれたものだと、どちらかがどちらかに脅されたり、気を遣ったりして、真意でない可能性も拭えません。
また、どちらかが撤回したいなと考えても自由がききません。
遺言というのは、遺言した人が亡くなった時に効力を生じるのですが、この遺言がいつ効力を生じるか(おじいさん亡くなった時なのか、おばあさんが亡くなった時なのか、2人とも亡くなった時なのか)、明確ではありません。
このように、共同遺言を認めてしまうと、困ったことが生じるのです。
また、別々に遺言をのこせば足りるのですから、あえて共同遺言を認める必要性もありません。
以上のような理由で、共同遺言は禁じられています。

内容が独立している場合

ちなみに、「おじいさんが亡くなったら、おじいさんの財産は全ておばあさんに相続させる」という内容とおじいさんの署名押印、「おばあさんが亡くなったら、おばあさんの財産は全ておじいさんに相続させる」という内容とおばあさんの署名押印といったように、それぞれ独立した内容の遺言を1枚の紙に残した場合、明確に分割できるために、遺言として有効となるのではないかという考え方もあります。

このような場合に、裁判所がどのように判断するのかは定かではありませんが、真意でない可能性があり得る点や、撤回が自由にできない点、また、あえて一枚の紙に残す必要性がないことを考えれば、無効とされる可能性は十分にあります。

ですので、どんなに仲良しだったとしても、遺言だけは1枚ずつ別々に書いてくださいね!


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